20代〜30代の若い世代の方が将来に向けた資産形成を考える時、まず候補に上がるのが次の3つの制度です。
- NISA(少額投資非課税制度)
- つみたてNISA
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
しかし、投資に興味がありマネーリテラシーが高い人でも、これらの制度の違いやメリット・活用方法についてしっかりと理解し、正しく実践できている方は多くありません。
そこでこの記事では、NISA・つみたてNISA・iDeCoの特徴と違いを、資産形成に興味のある投資初心者の方に向けて、分かりやすく解説していきます。
難しい用語はできる限り省き、
「3つのうち自分に最も合う制度が分かる」
ことが、この記事のゴールです。
「投資に興味はあるけど、何から始めたらいいか分からない…」
という方でも、記事を読み終える頃には、ご自身にぴったりの制度を自力で判断できるようになるでしょう。
まずは、投資初心者の最も知りたい疑問である、「NISA・つみたてNISA・iDeCo、どれが自分に合っているのか?」 について、制度の特徴を踏まえて分かりやすく解説していきます。
NISAを始めるべき人
- 余剰資金が多く積極的に投資したい人
- 投資にある程度慣れている、もしくは時間を割ける人
- 1~5年の短期・中期で結果を出したい人
上記の通り、NISAが適している人は「投資に回せる余剰資金と勉強のための時間や意欲があり、ある程度のリスクを考慮してでも運用益を増やしたい人」です。
NISAの特徴
NISAのメリットは、
- 数十万〜100万円程度のまとまった投資金額を非課税で運用できること
- 投資対象となる金融商品が豊富にあること
大まかにこの2点です。
余剰資金があり投資を積極的に行いたい方は、つみたてNISAより一般NISAが適しています。
ただし初心者にとっては、NISAの特徴でもある金融商品の多さが、「どれを選べばいいか分からない」というデメリットになることも。
また、つみたてNISAと比べて一度に多くの資金をつぎ込みリターンを狙える一方、株式や投資信託の下落によるリスク(損益)の可能性も大きくなります。
このNISAのリスクを抑えつつ、長期的にコツコツと利益を積み上げる制度が、次に紹介するつみたてNISAです。
つみたてNISAを始めるべき人
- 少額をコツコツ投資したい(積み立てたい)人
- 投資に関する知識も経験も少ない、初心者の人
- リスクをできる限り小さくしたい人
つみたてNISAとは、簡潔に説明するなら「少額かつ長期的な投資を目的としたNISA」です。
NISAと比べて年間に投資できる金額が少なくなる一方、非課税となる期間が20年間と長く続くため、まさに「将来の資産を積み立てる」ように、安定的な投資が可能です。
つみたてNISAの特徴
投資とは一般的に、
- 短期であるほどリスクが高い(リターンも大きい)
- 長期であるほどリスクが低い(リターンが少ない)
という傾向があります。
このリスクを低くする方法が、投資の勉強や経験を積み重ねたり、金融商品の目利きや売り買いのタイミングを判断するスキルを高めることです。
しかし初心者の方ほど、自分の資産を賭けて投資に挑戦することにはリスクが伴います。
その点つみたてNISAは、次の通り、投資に関するリスクを最小限に抑えつつ資産形成が可能です。
- 毎月の投資資金の上限が約3万円と少額であること
- 長期的な資産形成に適した金融商品しか購入できないため、投資先を安心して選べること
- 株価の上昇と下落に一喜一憂することがなく、精神的にも安定すること
「投資を始めるきっかけがほしい!」「まずは少額から始めて、投資を実践的に知りたい!」という方は、一般NISAではなく「つみたてNISA」が適しています。
iDeCoを始めるべき人
- 老後資金を積み立てたい人
- 節税効果を高めたい人
- 収入が安定している人
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、国民年金のような確定給付年金と異なり、個人で資産を運用して年金(老後資金)を作る制度です。
NISAのような非課税投資制度と違い、「節税」や「老後のための貯金」を重視した制度といえます。
iDeCoの特徴
「毎月一定の金額を積み立てる」という点ではつみたてNISAと似ていますが、iDeCoの最大の特徴は、つみたてNISAと違い掛金も所得控除されること。
掛金も運用益も所得控除されることから、節税と資産形成の両立が見込める制度です。
一方、iDeCoの一番のデメリットは、積み立てた資金を60歳まで引き出すことが難しいということ。
60歳前でも脱退一時金として引き出すことは可能ですが、条件がかなり厳しいことから、iDeCoを始める際は「60歳まで引き出せない」という意識を持つことが重要です。
また、iDeCoの節税効果は所得によって変動するため、安定した収入が一定以上なければ金銭的なメリットはさほど得られません。
この特徴から、iDeCoは「毎月の収入が安定している人」のみ利用すべき制度と言えます。
「資産をコツコツ形成したい!」「何かあった時はお金をすぐに引き出したい!」という方は、iDeCoではなくつみたてNISAがおすすめです。
また、iDeCoとNISA・つみたてNISAは併用することで、より効率的に資産形成や節税を行うことができます。
NISA・つみたてNISAとiDeCoは併用できる
NISAとiDeCo、またはつみたてNISAとiDeCoのどちらかの形で制度を併用することで、節税効果を高めることができます。
NISAとつみたてNISAはどちらか一方しか選択できないため、ご自身の投資スタイルを見極めた上で併用を検討しましょう。
NISAとiDeCoの併用が向いている人
一般NISAとiDeCoの併用が向いている人は、「老後資金を貯めつつアクティブな投資もしたい」という、両者の特徴を活かしたい人です。
iDeCoで将来の資産を確保しつつ余剰資金をNISAに回せば、老後の金銭的なリスクを減らした上で、株式をはじめ様々な投資に挑戦することができます。
つみたてNISAとiDeCoの併用が向いている人
一方、つみたてNISAとiDeCoの併用が向いている人は、「iDeCoの限度額以上に老後資金(長期的な資産)を貯めたい人」です。
投資をそこまで積極的に行う予定がなく、ある程度ほったらかしで資産運用と節税をしたい方は、つみたてNISAとiDeCoの併用によってより安定した資産形成が見込めます。
また、そもそも必ず併用しなければいけない決まりはないため、投資初心者の方は「まずはNISAもしくはつみたてNISAだけを始めて、慣れてきたらiDeCoも開始する」といった段階的な活用もおすすめです。
さて、次の章からは、
- NISAとつみたてNISA
- NISAとiDeCo
この両制度の比較から分かる「利用前に知っておくべき違い」を、簡潔にまとめていきます。
ご自身に合う制度を、比較や違いからも見極めてみましょう。
NISAとつみたてNISAで押さえるべき3つの違い
まずは、一般NISAとつみたてNISAのどちらを選ぶべきかを見極めるため、次の3つのポイントを見ていきましょう。
- 金融商品のバリエーション
- 年間の非課税投資金額
- 運用益尾非課税期間
金融商品のバリエーションの違い
・NISAは、投資先の選択肢が多い反面リスクも高まる
・つみたてNISAは、選択肢が少ない反面リスクも低くなる
NISAとつみたてNISAの最も大きな違いは、金融商品のバリエーションです。
アクティブな投資を目的とする一般NISAは、株式をはじめ実にさまざまな金融商品から投資先を選ぶことができます。
一方、つみたてNISAで選べる金融商品は、法令で定められた条件をクリアした「長期的な積み立てに適した投資信託」のみです。
金融商品の多さは投資の難易度やリスクに関わるため、ご自身のスタイルに合うほうを選択しましょう。
年間の非課税投資金額の違い
・NISAの非課税となる投資金額は、年間120万円
・つみたてNISAの非課税投資金額は、年間40万円(毎月3.3万円)
上記の非課税となる投資金額の違いからも、「余剰資金の多い人は一般NISAがおすすめ」であることが分かります。
NISAからつみたてNISA、またはつみたてNISAからNISAへの変更は年1回行えるため、投資初心者の方は、「最初はつみたてNISAで様子を見て、慣れてきたらNISAに挑戦する」というステップもおすすめです。
運用益の非課税期間の違い
・NISAは最長5年
・つみたてNISAは最長20年間
上記の通り、投資金額に非課税が適用される期間もNISAとつみたてNISAで異なります。
この違いから、
- NISAは、5年間で積極的に運用益を増やす短〜中期的なスタイル
- つみたてNISAは、20年間かけてコツコツ運用益を積み上げる長期的なスタイル
と、それぞれ向いている人が明確に分かれます。
NISAとiDeCoで押さえるべき3つの違い
続いては、一般NISAとiDeCoの違いも見ていきましょう。
両者の比較から知っておくべき違いは、次の3つです。
- 最低運用金額
- 運用資金の引き出し制限
- 税金の優遇
NISAとiDeCoの最低運用金額の違い
・NISAは最低運用金額が設定されていない
・iDeCoは毎月5,000円から掛け金を設定できる
iDeCoと比較したNISAのメリットは、5,000円未満の少額投資が可能であること。
ただし、NISAは短期〜中期の積極的な投資手法に合う制度のため、余剰資金を多くつぎ込むことで初めて節税のメリットを活かすことができます。
またNISAは、年間で120万円までなら非課税で運用が可能です。
NISAの最長保有期間は5年のため、最大600万円(120万円×5年)を上限に、非課税で投資を行うことができます。
運用資金の引き出し制限の違い
・NISAは運用資金をいつでも引き出せる
・iDeCoは途中引き出しの条件が厳しく、60歳まで引き出すことが難しい
先の章で解説した通り、NISAはあくまで「非課税で投資ができる制度」であり、資金はいつでも証券会社の口座から引き出すことができます。
一方、iDeCoは「個人で積み立てる年金」であり、途中出金は基本的に認められていません。
毎月・毎年の収入が不安定な方は、iDeCoの利用は慎重に検討しましょう。
税金の優遇の違い
・NISAは金融商品の運用益のみが非課税となる
・iDeCoは金融商品の運用益だけでなく、「投資金額の所得控除」「受取時の退職所得と公的年金の控除」も受けられる
NISAは運用益のみが非課税となるため、利益を出さなければ節税のメリットは少なくなります。
それに対してiDeCoは、積み立てた分だけ所得控除を受けられることから、安定した収入が一定以上ある人にとって大きな節税効果を生み出します。
「余剰資金はあるけどリスクは極力減らしたい」という方は、iDeCoの利用が最適解となり、つみたてNISAとiDeCoの併用もおすすめです。
まとめ
20代〜30代は、結婚や出産・出世や転勤など、ライフスタイルが大きく変化するイベントが多く想定される時期です。
このことから、途中で引き出すことが難しいiDeCoは、将来設計を見据えて慎重に検討すべき制度といえます。
その点、出金の自由度が高く資産形成も節税もできNISA・つみたてNISAは、投資を始めるきっかけとして非常におすすめです。
低リスクでコツコツと資産運用をしたい方は、まずは「つみたてNISA」を選択しましょう。
一方、ライフスタイルの変化を考慮した上で余剰資金を投資に回せる方は、「一般NISA」で積極的な資産運用に挑戦してみましょう。
投資や節税は、早く始めるほどリターンを多く、リスクを少なくすることができます。
ここまで記事を読んでいただき、資産形成のモチベーションが高まった方は、今回ご紹介した3つの制度のうち、まずはご自身に最も適したものを1つ実践してみてください。
この記事をきっかけに、多くの方が資産運用の世界に足を踏み入れていただけたら嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。